ヴェールド・アーマーに関するアリアナ・ヴァレリアの手記
私は父の書庫で古い文献を見つけた。そこには、エーテルの秘術とも言うべき内容が記されていたが、その内容は奇妙に思えるものだった。
この世界にはあらゆる空間内にエーテル(Ether)と呼ばれる魔力の源が漂っている。
筋力の少ない女性が厳しい戦いを生き抜くには、このエーテルを体内に取り込んでその力を活用する必要がある。
エーテルは全身から体内に吸収できるが、とりわけ心臓や下腹部付近の吸収効率が高い。但し、吸収効率の良い身体部位には、個人差がある。
体内に取り込んだエーテルは、呼吸や言語の発話によって体外へ吐き出される。
そのため、エーテルを身体に留めるには、胸部や下腹部付近を金属等の高密度の物質で覆うことや広い面積を覆うことを避けるべきだ。一方で口と鼻を覆い呼吸や発声を制限することが有効と考えられる。
私は半信半疑ながらも、アーマーを試作し、自ら着用し効果を確かめようと考えた。
この本の編纂者の偏執狂的な研究成果に触れ、若かった私はその熱に酔ってしまっていたのだろう。
何度かの試作に加え、呼吸法と体内エーテルの流れを感じる訓練を重ねることで、確かな効果を確認することが出来た。
私はこの種のアーマーをヴェールド・アーマー(Veiled Armor)と名付けた。
アーマーのエーテル性能及び着用者のエーテル能力が十分に高い場合、身体のあらゆるホメオスタシスをエーテルによって調整することが出来る。
即ち、エーテルによって体温調整や新陳代謝(身体の回復)の促進を行うことが可能だ。
熟達者に至っては食事、水分摂取、呼吸すらも殆ど必要ない。
これらのアーマーの制作過程は独特で、着用者の身体と素材を同調させながら制作する。それ故に、アーマーの能力は、触媒の役割を果たした女性の能力や特徴が色濃く反映される。
アーマーのデザインは、製作者が大体の型や素材を決定するが、最終的には素材と着用者の身体の同調の流れに任せることになる。
このアーマーは露出度合いが高い傾向があるが、アーマー自体で防御するのではなく、アーマーによって引き出されたエーテルによって身を守っている。したがって、露出度合いと防御力は相関しない。
アーマーと着用者のエーテルの力によって浄化作用を持たせることもでき、これによりアーマーを着用し続けても、アーマーや着用者の身体が不衛生になることはない。
これらアーマーの使用には注意点がある。長期間アーマーとマスクを着用して多大なエーテルを体内に蓄積することが常態化すると、アーマーとマスク無しでは身体と精神が衰弱する体質になってしまう。
さらに、ヴェールド・アーマーで増幅させたエーテルを多用し、身体を酷使し続けると、おそらく寿命を削ることになる。
これらのリスクは、団員たちに事前に伝えている。覚悟の上で団員の皆はこのアーマーを使用している。
どの程度使用するかは団員たちに任せている。必要な時にしか着用しない者もいれば、四六時中着用してエーテルを可能な限り溜め込もうとする者もいる。
着用者はアーマーのホメオスタシス機能により老いることはないが、大抵の場合若くして命を落とす運命にある。
私もきっとそうなのだろう。
アーマー能力の定量的評価
今後の制作活動の糧とする為、私はアーマーを13項目の指標で定量的に評価し記録することとした。但し、その能力値はオリジナルの着用者が使用した場合の数値であり、別の者が着用した場合は、大抵の場合著しく効果が低下する。
項目 | 効果 |
---|---|
物理防御 | 打撃、斬撃、刺突、等の物理的な攻撃に対する防御力 |
熱防御 | 熱に対する防御力。 自身が炎系魔法を使用する際の威力にも影響する。 |
冷気防御 | 冷気に対する防御力。 自身が氷系魔法を使用する際の威力にも影響する。 |
電撃防御 | 電撃に対する防御力。 自身が電撃系魔法を使用する際の威力にも影響する。 |
化学防御 | 酸やアルカリ、毒等に対する防御力。 自身が毒などの化学系魔法を使用する際の威力にも影響する。 |
エーテル防御 | 弱体化、精神攻撃、呪い等のエーテル攻撃に対する防御力。 自身が弱体化、精神攻撃、呪い等のエーテル魔法を 自分で使用する際の効果にも影響する。 |
筋力 | 武器や格闘による攻撃力 |
スタミナ | 持久力。長期戦に耐えられるかに関係する。 |
運動神経 | 戦闘時の素早さや走る速度 |
生命力 | ホメオスタシスを高め自己治癒する能力の高さ |
感覚 | 五感の鋭さ。視覚、聴覚、その他の感覚を高める。 |
知力 | エーテル魔法の効果を高める |
超感覚 | 周囲のエーテルと同調し、体内に取り込む力。 消耗した魔力の回復速度に影響する。 |